泉質の分類と作用について

洞爺湖温泉の泉質は別項でも述べたとおり『ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉』ですが、では、ほかにはどの様な泉質があり、又それぞれどういった作用があるのかを下記の表にまとめました。泉質によっての効果の違いなどを知る事も温泉を楽しむ上での醍醐味の一つといえるでしょう。

単純泉 日本に最も多い温泉で成分が一定基準に達していない為、身体への刺激が少なく利用範囲が広い事から万人向けの温泉といえます。
主な浴用の適応症 神経痛、冷え症、筋肉痛、関節痛、慢性関節リウマチ、打ち身、捻挫、脳卒中の回復期、骨折、外傷後の療養、手術後・病後回復期の静養、健康増進
主な飲用の適応症 飲むと胃粘膜に弱い刺激を与えるので軽度の胃炎に適応、利尿作用有り
主な浴用の禁忌症  
主な飲用の禁忌症  

塩化物泉 単純泉に次いで日本に多い泉質であり保温効果が高い為、別名『熱の湯』とも呼ばれています。ナトリウム塩化物泉のほか、陽イオンの主成分によりカルシウム塩化物泉、マグネシウム塩化物泉が存在します。
主な浴用の適応症 神経痛、冷え症、筋肉痛、関節痛、慢性関節リウマチ、打ち身、捻挫、不妊症、切り傷、火傷、慢性皮膚病
主な飲用の適応症 胃液分泌や胃腸の運動を促す。慢性消化器病、慢性便秘
主な浴用の禁忌症  
主な飲用の禁忌症 塩分制限の必要な高血圧症、心臓病、腎臓病、浮腫

炭酸水素塩泉 ナトリウム炭酸水素塩泉は重曹泉の名で知られています。いわゆる『美人の湯』、『美肌の湯』でアルカリ性の為皮膚表面の脂肪分や分泌物が乳化し洗い流され肌が肌がすべすべします。清涼感、冷感を覚えるので『冷の湯』とも呼ばれています。陽イオンの主成分によりカルシウム(又はマグネシウム)炭酸水素塩泉があり、アレルギー性疾患、慢性皮膚病、蕁麻疹に効果があります。
主な浴用の適応症 切り傷、火傷、慢性皮膚病、アレルギー性疾患、リウマチ性疾患
主な飲用の適応症 胃酸過多や胃・十二指腸潰瘍には食前に温めて、少酸症には食後に冷やして少量飲む。慢性胃炎、痛風、肝臓病、尿酸結石、胆嚢炎、糖尿病
主な浴用の禁忌症  
主な飲用の禁忌症 ナトリウム炭酸水素塩泉は塩化物泉同様。

硫酸塩泉(鉄・アルミニウム泉を除く) 代表的な硫酸塩泉としてナトリウム硫酸塩泉(芒硝泉)、カルシウム硫酸塩泉(石膏泉)、マグネシウム硫酸塩泉(正苦味泉)があり、いずれも保温効果が高く、降圧作用があるため高血圧症や動脈硬化症に適しています。
主な浴用の適応症 高血圧症、動脈硬化症、脳卒中、慢性関節リウマチ、打ち身、切り傷、火傷、慢性皮膚病、乾癬
主な飲用の適応症 胆嚢炎、胆石症、便秘症、肥満症、痛風、糖尿病、蕁麻疹
主な浴用の禁忌症  
主な飲用の禁忌症 ナトリウム炭酸水素塩泉は塩化物泉同様。下痢の時 

二酸化炭素泉 日本では数が少なく、飲むとソーダ水のような爽快感があり胃腸の働きを盛んにします。末梢血管拡張作用があるため、血圧低下作用があり高血圧症、心臓病などに適しています。ヨーロッパでは『心臓の湯』と呼ばれています。
主な浴用の適応症 高血圧症、動脈硬化症、心臓病、切り傷、火傷
主な飲用の適応症 慢性消化器病、便秘
主な浴用の禁忌症  
主な飲用の禁忌症 下痢の時 

鉄泉(含銅鉄泉を含む) 炭酸鉄泉と緑ばん泉に分類され、炭酸鉄線は慢性関節リウマチに、緑ばん泉は硫黄泉や酸性泉と併存する為皮膚病にも有効です。鉄イオンを含む為湧出時は無色透明ですが空気に触れると酸化するので褐色になります。
主な浴用の適応症 貧血、月経障害、更年期障害、リウマチ性疾患
主な飲用の適応症 鉄欠乏性貧血
主な浴用の禁忌症  
主な飲用の禁忌症  

硫黄泉 末梢血管の拡張作用が強く、動脈硬化症、高血圧症、心臓病、関節リウマチ、湿疹等に適しています。硫黄ガスは被痃痰作用があり、慢性気管支炎、気管支拡張症にも効果があります。
主な浴用の適応症 慢性皮膚病、切り傷、糖尿病、硫化水素型は高血圧症、動脈硬化症にも有効
主な飲用の適応症 糖尿病、痛風、便秘
主な浴用の禁忌症 皮膚粘膜の弱い人、光線過敏症、硫化水素型では高齢者の皮膚乾燥症
主な飲用の禁忌症 下痢の時

酸性泉 強い刺激、殺菌作用があり水虫、慢性湿疹などに効果があります。明礬泉(アルミニウム硫酸塩泉)も酸性泉の一種で、皮膚や粘膜を引き締める作用が強く、慢性皮膚疾患など酸性泉一般の適応があります。
主な浴用の適応症 皮膚病、水虫、トリコモナス膣炎
主な飲用の適応症 慢性消化器病
主な浴用の禁忌症 硫黄泉と同様
主な飲用の禁忌症

放射能泉 俗にラジウム温泉と呼ばれるもので主体はラドンとトロンです。尿酸の排泄を促す為『痛風の湯』と呼ばれています。放射能泉に含まれる程度の低線量放射線はむしろ人体に有益であると言われています。
主な浴用の適応症 痛風、動脈硬化症、高血圧症、胆嚢炎、胆石症、慢性皮膚病、慢性婦人病、神経痛、慢性関節リウマチ
主な飲用の適応症 痛風、慢性消化器病、胆嚢炎、胆石症、神経痛、筋肉痛、関節痛、吸入も有効
主な浴用の禁忌症
主な飲用の禁忌症

戻る

参考文献 大塚吉則著:温泉療法(癒しへのアプローチ)